研究概要 |
作物における硝酸態窒素含量(プ-ル)の軽減は,施肥窒素の利用効率を高めたり,収穫物の食品としての安全性も高めることに大きく寄与する。本研究は,主として園芸作物の硝酸プ-ルを軽減するための具体的方法を提示するため企画された。結果は,次の通りである。 1.硝酸イオン分析法の提示:HPLCーUV検出器法は,亜硝酸,硝酸の各イオンを10分以内に定量的に分析を可能にした。分析検体は,乾物試料を水抽出とし,1検体当り0.02〜0.06mgの範囲で十分定量性があった。また,本法と従来法のフェノ-ル硫酸法との間には,高い正の相関関係が認められた(γ=0.9357)。 2.硝酸プ-ルの器官別差異:硝酸プ-ルは,葉身>葉柄>根の順になるが,相対濃度(乾物当り濃度)は葉柄≒根>葉身の順となる。したがって,全窒素に対する硝酸含量比(%)は,光合成同化器官である葉身に比べて,非同化器官の葉柄,根部で約3倍高くなる。この理由は,硝酸還元酸素の葉緑体局在性と密接に関係するであろう。 3.サイトカイニン,ビタミンB群供与と硝酸プ-ルの軽減:リサイトカイニン;ホウレンソウにカイネチンを供与した場合,施肥窒素からの ^<15>Nの取り込みを促進し,この促進効果はカイネチンを土壌潅注することで著しく高まった。また,カイネチンの葉面散布は,葉柄の硝酸プ-ルを低下させた。2)ビタミンB群のうち,パントテン酸カルシュウム(PーCa)は,ハッカダイコン,コマツナ,ホウレンソウの硝酸プ-ルを減少させた。PーCaの最適濃度は,0.1%以下と判断された。 4.有機質肥料と硝酸プ-ルの軽減:有機質肥料の施用は,少肥,多肥とも,ホウレンソウの硝酸プ-ルを低くめ,その含量は無機質肥料のそれに比べ約1/2であった。この効果は,有機質肥料の無機化率の遅延によるものと判断された。結論としは,未利用資源の活用の重要性を指摘した。
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