研究概要 |
元年度において,DEAEーセルロファイン(CEL)やDEAEートヨパ-ル(TOY)のような陰イオン交換体がポリフェノ-ル酸化酵素(PPO)を強く吸着するが,その反応基質であるoージフェノ-ル類(ODP)に対する吸着力は比較的弱いことを認めた。そこで,本年度は本年度はこれらの吸着剤に加えて,イオン交換樹脂として知られているDowex(DOX)やAmberlite(AMB)等についても検討した。試料には主にアスコルビン酸(AsA)を添加して調製したリンゴの果汁を用いた。(1)バッチ方式:まず吸着剤の添加量の影響について調べたところ,イオン交換樹脂の中ではDOXやAMBが果汁のODP類を強く吸着することがわかった。しかし,樹脂の種類によっては吸着力が低いものもみられた。一方,PPO活性に対してはDOXがTOYやCELと同等の吸着力を示した。しかし,バッチ方式ではPPO活性が完全には吸着除去されないため,処理後の果汁は時間の経過につれて褐変していった。(2)カラム方式(連続処理法):元年度と同様の操作により,カラム通過後の果汁(吸着処理果汁)のポリフェノ-ル含量および褐変度の経時的な変化を追跡した。その結果,DOXおよびAMBのカラムを通過した果汁はODP含量が低く,褐変もみられなかったが,無処理果汁およびCELカラム通過果汁は著しく褐変した。しかし,供試した吸着剤はいずれも粒子サイズが相違しており,その吸着性に及ぼす影響が考えられた。DOXについて調べたところ,粒子サイズは100〜200メッシュ程度のものがODP等の吸着除去率が高く,目詰まりも少ないことがわかった。そこで,吸着処理したリンゴ果汁の成分を分析したところ,無処理果汁に比べていずれも糖度は変わらなかったが酸度の低下からみられ,特にDOXやAMBで処理した果汁の酸度低下が著しかった。AsAについても同様の減少傾向がみられた。しかし,本実験で実施した吸着処理方式では,果汁調製時に褐方防止のために十分量のAsAの添加が不可欠であり,これが果汁製造後の非酵素的褐変の原因となるので,今後はAsA無添加の搾汁方式を模索する必要がある。
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