研究概要 |
根部が常に養液に接している養液栽培においては,栽培されている植物体の生理反応は,土耕栽培されているものと比較して異なるものと思われる.光合成と蒸散は,作物の成長と生産に重要な役割を果たす機能であり,植物の生理状態や環境要因によって強く影響させる.一般に,養液栽培は施設内で行わせることが多,地上部環境は人為的な影響を受け,また,地下部環境についても同様である.これまで,光合成と蒸散について多くの研究がなされてきたが,養液栽培で育てられている作物を使い,生育現場で測定し解析されたものは少ない様である.我々は,環境要因の変化を同時に測定し,環境要因と光合成・蒸散作用の関係を偏回帰分析の手法を用いて解析し,栽培現場での環境要因の重要度を評価することにより,養液栽培における環境要因の制御に関する指針を得ようとした。 主としてトマトを用い,栽培時期と天候,作物の齢により,環境要因の重要度が異なるのかどうか検討した.その結果,高温期においては光が弱い時は光要因の影響が大きく,温度要因は負の影響を示し,光が強い時では,温度要因の正の影響が大となり,飽差は負の影響を示すことが考えられた.蒸散においても同様であり,飽差の影響は光が強い時に認められた.低温期では,測定に用いた個体の齢による差異が認められた.老化個体においては,光の影響は低下し温度要因の影響が増大した.一方,若齢個体においては,光の影響が強くなった.低温期においても光強度は高温期と同様に高かったことから,植物体の齢によって,光合成・蒸散と環境要因との関係が異なることが考えられた.今後さらに測定例を増やし,これらの関係について検討した行きたい.さらに他の作物についても調査し,養液栽培と土耕栽培における相違点を明らかにする予定である.
|