研究概要 |
マメ科植物に寄生するファコプソラ様さび菌の形態的特徴と宿主範囲を比較研究し、Phakopsora6種、Cerotelium5種およびMilesia3種を分類学的に独立した種と認めた。これらのうち、Phakopsora2種は新種である。ダイズに寄生性を持つ菌はPhakopsoraに属するが、それについて、夏胞子世代と冬胞子世代の形態的特徴の変異と宿主範囲およびダイズなどの栽培マメ類にたいする病原性を比較研究した結果、アジアに分布する菌と新熱帯(中南米)に分布する菌は、冬胞子堆の構造、冬胞子の形態、自然状態での実際の宿主植物の範囲、および、ダイズとインゲンマメにたいする病原性において異なり、それぞれは独立した種であると結論した。アジアに分布する菌はPhakopsora pachyrhizi H.Sydow&P.Sydowで、ダイズにたいして強い病原性を示し、主要な宿主は、栽培種であるダイズ(Glycine max)、クズイモ(Pachyrhizus erosus)、ヤッコササゲ(Vigna unguiculata)、および野生種であるツルマメ(Glycine soja)、グス(Pueraria lobata)、Pueraria montanaである。それにたいして、新熱帯に分布する菌はPhakopsora meibomiae(Arthur)Arthurで、ダイズへの病原性は弱いがインゲンマメ類にたいする病原性は強い。この菌の主要な宿主は、栽培種であるフジマメ(Lablab purpureus)、ベニバナインゲン(Phaseolus coccineus)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、および野生種であるAeschinomene americana,Canavalia villosa,Crotalaria spp.,Desmodium spp.である。これら分布域を異にするダイズさび病菌は自然条件下でそれぞれ独自の宿主範囲を持つが、これまでの接種試験結果報告は、両種に共通した潜在的宿主があることを示している。
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