研究概要 |
土壌伝染性植物病原菌であるFusarium oxysporumの変種(分化型,レ-ス)およびRhizoctonia solaniの変種(菌糸融合群AGー9)において,DNAの構造解析(DNAーDNA再会合反応速度解析法,ミトコンドリアDNAの制限酵素断片長多型比較,パルスフィ-ルド電気泳動法)に基づき,遺伝的な類縁関係を調査した。 1.F.oxysporumの分化型間でDNA相同性を比較した。その結果,同一分化型の菌株は相互に高い相同性(95%以上)を示し,遺伝的に均一であることが確認された。異なる分化型の菌株間では低い値(63ー86%)を示し,分化型は遺伝的に分化した種内群であると考えられた。また,トマト萎ちょう病菌(F.o.f.sp.lycopersici)レ-スJ3はDNA相同性比較により,radicisーlycopersiciに分類すべきであると考えられた。 2.R.solani(AGー9)の菌株間の遺伝的類縁性を検討するため,DNA相同性を比較した。その結果,本菌群は本菌の他の菌群とは遺伝的に異なる独立したグル-プであることが確認された。また,本菌群チアミン非要求菌株(AGー9 TP)およびチアミン要求菌株(AGー9 TX)から成ることが示された。 3.トマト萎ちょう病菌でミトコンドリアDNA(mtDNA)制限酵素断片長多型(RFLP)を調査した。その結果,本菌は3グル-プに類別され,体細胞的和合性グル-プ(VCG)とよく一致したが,レ-スとは一致しないことがわかった。mtDNA RFLP解析は本菌分化型内の遺伝的分化を知る上で有効な手段であると考えられた。 4.トマト萎ちょう病菌でパルスフィ-ルド電気泳動法により,染色体DNAの多型を調査した。その結果,本菌の染色体数は6ー8本,長さはおよそ900ー6,000Kbであった。多型現象は3,000Kb以下の染色体部分において観察されたが,多型とレ-スとには一定の関係が認められなかった。本手法の意義はさらに検討を要する。
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