研究概要 |
近年国際的に認知された非アロフェン質黒ボク土は強酸的性格を有し農業上取扱が極めて重要である。本研究では非アロフェン質黒ボク土の酸性障害発現機構とその東北地方に於ける分布状況を検討した。 1)黒ボク土を非晶質成分により、アロフェン質黒ボク土と非アロフェン質黒ボク土に区分し25cm毎の諸性質を検討した。その結果、両黒ボク土は礬土性や腐植の著しい集積など多くの共通した性質を示す反面、土壌酸性においては、アロフェン質黒ボク土が弱酸的、非アロフェン質黒ボク土が強酸的と著しい違しが存在することを明らかにした。 2)黒ボク土の酸性障害を詳細に検討した結果、その原因はAl^<3+>の過剰害で、土壌診断法としては土壌溶液Al^<3+>濃度より、交換酸度ylやKCl抽定Al,Al飽和度の方が有効であった。特に測定が容易な交換酸度ylは極めて実用的な方法であった。黒ボク土の国際分類(ICOMAND)で用いられるAlの過剰害が問題である黒ボク土(Alic,KClーAl>2me/100g)は、交換酸度y1>6以上、(強酸性)に相当した。 3)精密圃場試場により、黒ボク土下層の酸性状態と作物の生育を検討した結果、オオムギ(冬作物)、ソルガム(夏作物)とも、強酸性の非アロフェン質黒ボク土で作物根の下層土への伸長が著しく抑制され、アロフェン質黒ボク土に比べて生育収量や窒素吸収量が著しく低下した。 4)東北各県の代表的黒ボク土(環境基礎調査の定点土壌、245地点、393試料)を非晶質成分によりアロフェン質と非アロフェン質に区分した。この結果と開拓地生産力阻害要因図の強酸性黒ボク土の分布状況、降下火山灰分布図、気象条件などを考慮して、両黒ボク土の東北における分布図を作成した。その結果、非アロフェン質黒ボク土は、日本海側や高標高地の多雨地域に、アロフェン質黒ボク土は、寡雨地帯な有色ガラスあるいは軽石を母材とする地域に主として分布する事が明らかとなた。
|