研究概要 |
平成元年〜2年度にかけて水ストレスによる作物の物質生産の阻害機構の解析を進め、作物の耐干性機構を明らかにした。主な供試草種は、耐干性の強いロ-ズグラスと弱いハトムギ、さらにトウモロコシ品種のうちこれまで圃場試験の試験結果から選定した耐干性の強いFFR915C,K8388と弱いJX77と交1号の4品種である。なお水ストレス処理は,土耕試験及び圃場試験ではpF1.7〜2.0とpF2.8〜3.2に土壌水分を調節し,水耕栽培試験はマニト-ルにより培地水ポテンシャルを変動させることにより行なった。その結果(1)いずれの草種とも水ストレス下で相対生長率(RGR)と純同化率(NAR)はともに低下し,その低下率は耐干性種ほど小さかった。しかし,葉面積比(LAR)には変動は認められなかった。この結果から,作物の耐干性は葉の生理的機能の維持と密接に関連しているものと推察された。(2)葉で同化した^<14>co_2の植物体各器官への分配率から,耐干性の弱い草種ハトムギでは,同化^<14>Cが葉部に留まり根部への移行が著しく阻害された。さらに^<14>Cが根構成成分のリグニン・セルロ-スへの取込みも少なかった。(3)水毒(H)のトレ-サ-である^3H_2OとD_2Oを用いたトレ-サ-実験から耐干性の強いロ-ズグラスでは水ストレス下でも吸収した^3H_2O,D_2Oが速やかに地上部移動できるのに対して,弱いハトムギでは根から地上部への水の移動量が少なくその速度も遅いことが明らかとなった。また,耐干の弱い草種では根と茎の接合部(茎基部)や葉身と茎の接合部(節部)で水の流れが阻害され易く,葉への水の分配が悪化することが示唆された。(4耐干性の強い草種では細胞膜の脂質特にリン脂質量とその不飽和脂肪酸含量が水ストレス下で著しく増加することから,水ストレス下での細胞膜安定性がより強化されることが明らかとなった。
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