研究概要 |
1.蛍光検出高速液体クロマトグラフィ-を用いる環境試料中のセレン(Se)定量法を開発した.この方法を用いて,土壌の全Seと可溶性Seを,良好な再現性と感度で定量することができた.さらに,この定量法を土壌の可溶性Seの分別定量法に応用した. 2.京都府亀岡盆地で採取した耕地土壌50点を例に,土壌の全Se及び可溶性Seの定量を行った.その結果,作土層と第二層の全Se濃度の平均値は,それぞれ0.288,0.323ppmであった.土壌の水溶性と熱水可溶性Se濃度はそれぞれ8.9,20.4ppbで,これらは全Seのそれぞれ3.1,7.1%に相当した.また土壌全Seと可溶性Seの濃度間には有意の相関が認められた. 3.Sephadex G25を用いるゲル瀘過法によって土壌の可溶性Seの多くが低分子あるいは高分子状の有機態であることが認められた.例えば上述の耕地土壌の場合,可溶性Seの平均69%が有機態で存在した.さらに可溶性の有機態Seの主な化学形態として,タンパク質やペプチドに含まれるセレノアミノ酸を推定された. 4.動物の尿中に含まれるトリメチルセレノニウムイオン(TMSe)の挙動を,土壌にTMSeを添加して検討した.土壌に添加したTMSeを,土壌微生物によって速やかに分解され多くのガス状化合物に変化することが認められた.この結果から,TMSeが土壌の安定な有機態Seとして存在する可能性の少ないことが示唆された. 5.土壌Seがアルカリ溶液に容易に溶解することから,土壌のアルカリ可溶性Seの形態から土壌Seの存在形態を推定した.その結果,従来無機態が土壌Seの主要な形態と考えられていたのに対し,土壌Seの多くが有機態で存在することが認められた.
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