研究概要 |
平成元年度の研究で、天然セルロ-スに対し特異な高活性を示す新規多機能セルラ-ゼ成分を、Trichoderma viride液体培養物から高純度かつ高収率で得る単離・精製法を確立した。平成2年度の研究では、当該新規精製セルラ-ゼの作用特性・機能特性などを精査することにより、天然セルロ-スの酵素的分解機構の完全解明を目的とした。以下に、本年度得られた研究実績の概要を列記する。 1)T.viride液体培養物より調製された市販セルラ-ゼ製剤(メイセラ-ゼ,lot,No.CEPBー5019)を出発材料として,昨年度確立した精製法に従って、当該新規セルラ-ゼ成分(セルラ-ゼIIーb)を高純度かつ高収率で精製した。 2)精製セルラ-ゼIIーbはβーD__=ーセロビオ-ス(βーG_2)を特異的に利用して、短期間内に多量のグルコ-ス(G_1)を精製する機能を具備しており、その反応曲線はエキスポネンシャルな様相を呈した。 3)100mMのβーG_2に比較的長時間精製セルラ-ゼIIーbを作用させると、反応曲線はシグモイド型を呈した。この事実は、本G_1生成反応がsingleーstepの反応ではなく、multiーstepの反応であることを強く示唆している。 4)3)の反応条件下で、反応生成糖を経時的にPPCで解析すると、生成糖には多量のグルコ-スばかりでなく、少量のセロトリオ-ス(G_3)、セロテトラオ-ス(G_4)、ゲンチオビオ-スなどが確認された。 5)セルラ-ゼIIーbの有する特異な縮合・転移・水解作用により、βーG_2、からG_1、G_3、G_4、ゲンチオビオ-スが生成される機構は、G_4の濃度を一定に保持しつつ、サイクリックな経路をたどるものと思われる。 6)多数のデ-タを総合して、天然セルロ-スの酵素的分解機構に関する新規概念を提出した。
|