研究概要 |
タンパク質耐熱化の一般則構築のため、「プロリン説」を提唱し、プロリン残基と耐熱性の強い相関を追究してきた。タンパク質レベルで比較した、生育温度の異なるBacillus属細菌5種菌株のオリゴー1,6ーグルコシダ-ゼのうち、3種菌株(B.cereus ATCC7064,B.coagulans ATCC7050,B.thermoglucosidasius KP1006)の本酵素遺伝子を単離し、決定した塩基配列から推定した相同性の高いタンパク質の一次構造を比較した。プロリン残基は耐熱性獲と共に増加し(19ケ→24ケ→32ケ)、新たに出現したプロリン残基は不規則な折れ曲がり構造中にほとんど存在していることを高次構造予測から確認した。そこで耐熱性の高い2つの酵素で新たに出現するプロリン残基のうち3箇所を、耐熱性の弱い<B.cereus>___ーの酵素の置換された残基に指定し(K121,E175,E290)、変異プライマ-を用いてその遺伝子上の部位特異的変異を順次起こし(Mutー1,K121→P;Mutー2,K121→P,E175→P;Mutー3,K121→P,E175→P,E290→P)、プロリン残基の置換導入を行った。得られた変異酵素の耐熱性を比べると、10分間で50%失活する温度は、野生型から順に44.5,45.9.46.3,47.1℃で、プロリン置換1残基につき約0.4〜1.4℃の異積的上昇が確認された。さらに45℃で熱処理すると、野生型が6分で活性が半減するのに対し、変化酵素はMutー1が27分、Mutー2が120分、Mutー3でさらにそれ以上という段階的に耐熱性を上昇する結果を示すことができた。このことは他のタンパク質についても「プロリン説」を適応できる高い可能性を示唆する。一方本酵素におけるプロリン残基の正確な構造における位置を特定するため、B.cereusの酵素遺伝子を操作し、大量発現、大量精製及び結晶化に成功し、現在大阪大学蛋白研究所のグル-プと共同でX線構造解析を行っている。
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