研究概要 |
微生物起源のα,βー不飽和カルボニル構造を持った抗腫瘍抗生物質が、生体内で重要な機能を有するSH酵素とMichael付加反応を起こし抗腫瘍活性を持つような新規物質の単離・精製、構造解析を目的として研究を行った。大阪府堺市内の土壌より目的に適うかびNo.55およびNo.155株を分離した。得られたかびの最適培養条件を検討し、培養濾液より活性物質を各種クロマトグラフィ-を用いて、単離・精製した。得られた物質は各種スペクトルデ-タ、特に ^1Hー^1H,^1Hー^<13>Cシフト相関2DーNMR(COSY)スペクトル、の解析を行い、また必要に応じて単結晶X線構造解析を行って、それらの構造を決定した。Myrothecium verrucaria No.55株から得られたシクロプロパン環を持ったピマラン型ジテルペノイドであるmyrocin CとBの構造を1,20ーcycloー6,9ーdihydroxyー7ーoxoーおよび1,20ーcycloー6,9ーdihydroxyー7,11ーdioxoー8,15ーpimaradieneー19,6ーγーlactoneと決定した。同時に、シクロプロパンの開裂した55ー0物質も単離し、myrocin C,Bと比較してその構造を9ーhydroxyー7ーoxoー1,5,8,15ーpimaratetraeneー19,6ーγーlactoneと決定した。No.155株(Penicillium sp.)からは塩素を含んだ新規シキミ酸誘導体である155ーB物質を単離し、その構造を(1R,6R,9S,10S)ー9ーchloroー10ーhydroxyー8ーmethoxycarbonylー2,,5ーdioxabicyclo[4.4.0]decー3ーoneー7ーeneと決定した。 Myrocin B,Cは還元型グルタチオンと拮抗するが、55ー0物質は拮抗しない。Myrocin B,Cおよび55ー0物質のエ-ルリッヒ腹水癌細胞を移植したマウスに対するin vivoでの試験は、Myrocin Bの延命率は169%、Myrocin Cは130%といずれも顕著な抗腫瘍活性を示し、55ー0物質は全く活性を示さなかった。一方、155ーB物質はPー388マウスリンパ球白血病細胞に対して5ーFluorouracilと同程度の細胞増殖抑制効果を示した。
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