研究概要 |
ナカハラクロキ癌腫(こぶ)細菌病病原の生理・生化学的性質および宿主特異性、病原性等の生態を調査し、その分類学的所属を決定した。 1.沖縄県内の当該樹種の枝幹あるいは葉柄に、こぶを形成する新しい病害が発見された。こぶの表層は瘤〜癌腫で淡褐色〜褐色であった。 2.病原はグラム、好気性の桿菌で1〜5本の極鞭毛をもつ。PHBの蓄積があり、糖を酸化的にのみ分解し、最高、最適および最低発育温度はそれぞれ、38,29〜35,15℃,pH成育域は4.0〜7.0であった。 3,陰性の反応を示した性状:インド-ルの産生、スクロ-スからの還元物質の産生、アルギニンの加水分解、ゼラチンの液化、グルコン酸塩の酸化、タバコ過敏感反応、Tween80の加水分解およびレバン産生等、炭素化合物(スクロ-ス、メリビオ-ス、デキストリン、デンプン、アドニ-ル、Dー、Lー酒石酸およびLーバリン等)の各利用性。 4,陽性の反応を示した性状:カタラ-ゼ活性、オキシダ-ゼ活性、硝酸塩の還元性、硫化水素の産生、脱窒反応、尿素試験、チロシナ-ゼ活性およびアンモニアの生成等、炭素化合物(Dーリボ-ス、Dー、Lーアラビノ-ス、Lーラムノ-ス、Dーマンノ-ス、乳酸ナトリウム、Lーαーアラニン、Lーアルギニンおよびβーアラニン等)の各利用性。 5,病原を65科178種の木本、草本両植物に接種したが、ナカハラクロキ、クロキおよびタバコにのみこぶを形成し、同一病原を再分離した。 6,以上の結果から、本病原はPseudomonas属の1新種として同定された。本病原をPseudomonas symploci n.sp.と命名し、その特有な病徴から病名をナカハラクロキ癌腫(こぶ)細菌病[Cancerous bacterial disease of nakaharakuroki(Symplocos lucida var.nakaharae Mak.and Nemoto)]と呼称し本菌のpatnotype strain としてSLv3を指定し、近々、本菌株をATCC(U.S.A)、NCPPB(England)およびICMP(New Zea land)に寄託したい。
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