研究概要 |
(1)細胞核を移植するための宿主胚の作成: Hoechst33342で核を顕在化し、卵膜を除去した卵より、蛍光顕微鏡下でマイクロインジェクタ-を用い核の除去を行った。針先を細胞質に挿入せず、卵黄膜表面に密着させ細胞質ごと核を吸引することで無核胚が得られた。受精卵の第1卵割に中期に核除去を行うと胚発生が進行しないが、前期と後期に除核をした卵は卵割し、胞胚程度まで発生が進行した。しかしながら、正常胚では上皮層、深層細胞、周縁質と3層に分化する胞胚が無核胚では3層に分化しなかった。(2)卵核除去卵への外来核導入法としての電気細胞融合法の検討: 卵同士の接着を誘起する高周波パルスは、今回購入した装置の設定範囲では非常に弱く融合の前段階の処理には用いることが出来なかった。融合へ導くパルスは、0.18Mショ糖、1.8mMCaCl_2溶液中では、電圧を高めるかパルス幅を広げるほど、卵の急激な収縮を引き起こすことが示された。この収縮は電気融合法の適用の阻害要因であった。胚盤が形成されるまでの卵の収縮は、融合パルスにより培養液中のCa^<2+>イオンの卵内への流入により収縮が引き起こされることが判明した。受精後30分以内の卵ならば50〜100μM程度の低濃度のキレ-ト剤存在下で、750V/cm,10μsのパルス処理により卵同士の融合は誘起された。胚盤の形成された卵ではこの条件下でも収縮が起こり、卵同士の融合は不可能であった。(3)Donor細胞としての分離胚細胞の調整: 核を提供する細胞として桑実期から胞胚期間での胚細胞を100μM程度のキレ-ト処理により分離することが出来た。またこれらの分離した胚細胞は、250V/cm,10μs程度の電気的処理により容易に細胞融合することが確認された。(4)分離胚細胞と未受精卵との電気的細胞融合: 未受精卵と分離胚細胞をレクチンで架橋し、電気的細胞融合を試みたが、例数が少なく現在まで融合は確認されていない。
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