研究概要 |
本研究は、マアジ筋肉水抽出エキス中のブリに対する摂餌刺激成分の検索と,有効成分による摂餌刺激と化学感覚の関わりについて明らかにする目的で行なった. 1)マアジ筋肉水抽エキスは,既往のエキス分析値をもとに調製したアミノ酸,ヌクレオチドおよび有機塩基からなる合成エキスより強い摂餌刺激効果を示した. 2)天然エキス中の脂質成分の画分の摂餌刺激効果について検討した結果,単独では刺激効果はなく,1)の合成エキスに添加しても協同的効果は認められなかった. 3)脂質成分の嗅覚器および味覚器に対する刺激効果はいずれもきわめて弱いものであった。 4)天然エキス中の乳酸の摂餌刺激効果について検討した結果,乳酸は単独では特に刺激効果を認めなかったが,1)の合成エキスに添加したときに合成エキスの効果を増強はた. 5)乳酸の嗅覚器および味覚器に対する刺激効果を調べた結果,味覚器の刺激閾値は10^<ー6>〜10^<ー5>Mで,最も感度の高いアミノ酸であるプロリンの閾値に匹敵し,一方,嗅覚器では,アミノ酸等に対する感度はきわめて高いが,乳酸の閾値は10^<ー4>〜10^<ー3>Mで,感度は低いものであった. 6)天然エキス,合成エキスおよび乳酸に対する味覚器応答は摂餌刺激実験の結果とよく対応しており,一方,嗅覚器の応答にはそのような対応関係は認められなかった.これらの結果から,口内への取り込み・嚥下の段階においては味覚器が,より遠いところの餌の探索には嗅覚器が密接にはたらいているものと考えられる. 7)乳酸を合成エキスに添加したときの摂餌刺激効果はなお天然エキスのそれに劣るものであったので,さらに有効成分の検索が必要である。
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