研究概要 |
動物の代謝量Mと体重Wの間の関係式M=aW^bにおけるb値は普通1より小さく、代謝速度M/Wは体重の増大に伴って低下する。しかし個体発生の初期にもこの現象が認められるかどうかは明かでない。本研究では発育段階の初期における代謝量ー体重関係が後期とどのように違うのか、またなぜ異なるのかをマダイPagrus majorでしらべた。 (1)生きたマダイの代謝量Min vivoは概ね前期仔魚期(体重0.00020ー0.00025g,0ー6日齢)、後期仔魚期(0.0003ー0.05g,8ー25日齢)、稚魚期以降(0.005g以上)に対応する3相性の個体発生的変化を示した。前期仔魚期には体重は殆ど変化せず、M/Wは日齢とともに4.9から18μ1.g^<ー1>・min^<ー1>まで直線的に増大し、後期仔魚期にはM/Wは体重に関らずほぼ一定で(b=0.95)、稚魚期以降は体重の増大に伴って低下した(b=0.82)。従って普遍的現象とされてきたM/Wの体重増大に伴う低下は仔魚期には認められなかった。 (2)0.00020ー2.9g(0ー67日齢)のマダイの体全体の細切片の代謝量Min vitroも生きたマダイと同様の3相性の個体発生的変化を示し、M/Wは前期仔魚期には日齢とともに直線的に増大し、後期仔魚的にはほぼ一定で(b=0.92)、稚魚期以降は低下した(b=0.77)。従ってM/Wの体重依存現象はin vitroにおいてもin vivoと同様に認められた。 (3)0.00022ー0.021g(6ー37日齢,概ね後期仔魚期に相当)のマダイの体を頭部、躯幹部、内臓に分けたときの部分重量の相対成長はいずれもisometryであった。また部分の組織呼吸量Qo_2は僅かに体重増大に伴って低下する傾向にあったが、体重に対する相関は認められなかった。部分の相対成長とQo_2から計算した個体当り呼吸量M'in vitroと体重Wの間の関係式におけるb値は0.94となり、この値はMin vivoの0.95、Min vitroの0.92と近似していた。従って後期仔魚期にM/Wが体重に関らずほぼ一定なのは相対成長がほぼisometryなためと考えられた。
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