研究概要 |
伊豆半島,伊豆諸島,紀伊半島,四国沿岸などで海綿74検体,腔腸22検体,外肛8検体および原索動物4検体の合計108検体を採集した。各検体を熱メタノ-ル抽出,クロロホルムと水の分配により水溶性および脂溶性画分を調製した。それぞれの画分について,ブタ膵臓由来にホスホリパ-ゼA2に対する阻害活性を常法により調べたところ,海綿36検体,腔腸6検体,外肛3検体および原索動物1検体に活性が認められた。いずれも脂溶性画分に活性が認められたものが多かった。なお海綿はIC50値がIMg/mlと強い活性を示すものもあり,抗炎症物質探索のタ-ゲットとして最適と思われた。 次に,上記スクリ-ニングで浮かび上がった有望種から活性物質の分離と構造の解明を試みた。先ず,水溶性画分に著しい活性の認められた伊豆半島産海綿Discodermia sp.の凍結試料を70%エタノ-ルで抽出後,溶媒分画,ゲル沢過,HPLCなどで活性物質を精製したところ,先に海綿から抗カビ物質として単離・構造決定した環状ペプチドdiscoderminA〜Dの混合物であることがわかった。そこで各成分をHPLCで分離して,活性を調べたところ,IC_<50>0.6〜1.9Mg/mlと強い活性を示した。なお,主成分のdiscoderin Aはマウスに対して,in ViVoで抗炎症作用を示した。続いて,脂溶性画分に強い活性が認められた紀伊半島産海綿Ircina spのエタノ-ル抽出物から,同様な手法を用いて純粋な活性物質(IC_<50>5.0×10^<ー5>M)を得ることができた。主に二次元NMRを用いて構造の解析を行ったところ,本物質は1979年に地中海産海綿から発見されたフラノセスタテルペンのPalinurinと固定した。 最後に,八丈島で採集した未同定海綿から活性成分の分離・同定を試みたところ,活性成分はリン脂質の混合物であることが判明した。
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