研究概要 |
1.5℃の低温で溶菌(細菌細胞溶解)能を有する菌株Bacillus sp.T301,T303,E33株)は、ポリペプトン(0.5%)、酵母エキス(0.5%)を含む90%海水培地(pH7.0)振盪培養すると培養液中に液菌酵素を遊離した。溶菌酵素生産のための最適温度は13ー17℃であった。また、20ー25℃で分離した溶菌酵素生産菌Bacillus sp.V37株は溶菌酵素生産のための最適温度が24ー26℃付近にあり、低温で分離した溶菌酵素生産菌のそれよりも明らかに高温度域にあった。低温における溶菌酵素生産量は、V37株よりもT301,T303,E33株などの方が高い値を示した。一方、真菌細胞溶解菌No.5株は、ポリペプトン(0.5%)、酵母エキス(0.5%)を含む90%海水(あるいは0.3 M NaCl)培地で30℃で約5ー6日間振盪培養すると培養液中に多量の溶菌酵素を蓄積した。 2.T301,T303,E33株により生産された溶菌酵素の活性の最適温度は30ー40℃付近にあったが、10℃付近でもかなりの溶菌能を有していた。 また、No.5株により生産された真菌細胞溶解酵素の活性は、pH9付近、50ー60℃付近で最大であり、70℃、10分で完全に失活した。NaCl、KCl、MgCl_2、CaCl_2、Na_2SO_4などの無機塩(0.05ー0.20M)及びロイペプチン、アンチパイン、ホスホラミドン、E64(0.1mM)などのタンパク分解酵素阻害剤は溶菌活性を阻害した。 3.分離したキチン分解菌のうち、キチン分解能の高い10株についてNo.5株の溶菌酵素との併用による基質細胞溶解の強化を試みた結果、キチン分解菌Bacillus sp.F190株との協同作用により溶菌能を約1.5倍に増大せしめることができた。 4.海洋環境よりアセトアミド資化性菌を分離し、アセトアミド資化能の高いBacillus sp.Ac23株を用いて、キチンの脱アセチル化を試みたところ、基質が粉末キチンか再沈澱キチンかにより若干異なるが、定性的にチキンの脱アセチル化が認められた。
|