構造的供給過剰、オレンジの輸入自由化の決定等日本の柑橘農業を取り巻く環境は一段と厳しさを増してきた。国際化に対応できる体制を確立するために、農家段階、産地(農協)段階、県・国段階でそれぞれ適切な方策を講じることが求められているが、本研究では農家段階、産地段階でどの様な対策を講じることが必要かを研究した。温州ミカンの銘柄産地を研究対象とし、アンケ-ト調査、聴き取り調査により、柑橘経営の実態、今後の農業経営に関する意向、樹園地流動化に対する意向を分析した。調査の結果、当該産地では40〜50歳の壮年を中心に比較的多くの労働力が存在し、100〜200a規模階層を中心に、経営規模拡大希望農家が全農家の3割以上みられた。しかし、当該地区では樹園地の購入希望、借入れ希望の方が販売希望、貸出希望より多く、樹園地市場は売り手市場、貸手市場であった。購入希望、借入れ希望を満たす方策を立てることが重要な課題である。樹園地の売買、貸借に関する農家の意向をデ-タベ-ス化してそれを有効に活用するとともに、売り手、貸し手の掘り起こしを農協、役場、農業委員会が組織的に行うことが必要である。当該地区では果樹地帯としはかなり高い割合の樹園地が個別相対を中心に流動化している。しかし、こうした個別相対を中心にした樹園地の流動化は、営農に意欲的は農家への樹園地の集積や、樹園地の団地化を必ずしも保障しない。関係者、関係機関が協議して地域の樹園地の合理的な利用計画を作成し、それをもとに組織的、計画的に樹園地流動化を推進し、自立経営志向農家に樹園地を集積し、できるだけ多くの自立経営農家を育成することが重要と思われる。樹園地流動化が進まない理由の1つに借地への改良投資に対する経費負担が不明確な点が指摘されているので、有益費問題を解決する方策を確立することが必要である。また、土地基盤整備はコスト低減、樹園地流動化にとって有効な方策である。
|