研究概要 |
本研究は収穫した籾を規定の水分にまで乾燥し,胴割れが少なく高品質米に仕上げる籾の乾燥方法について検討しようとするものである。ここでは,遠赤外線による籾の乾燥方法について,この方法が本研究の目的にあった乾燥方法であることを確かめて,その乾燥技術の確立を計ろうとするものである。 1.遠赤外線ヒ-タの特性と一粒籾の内部温度の変化遠赤外線ヒ-タは通電を始めてから20分くらいで一定の表面温度に達する。ここでは,直径約40mmのシャ-レに籾を並べ,表面温度(約595℃)のヒ-タから遠赤外線を照射し,一粒の籾に熱電対を埋込んで内部温度の変化を求めるとともに,内部温度を測定する一粒籾の近傍の籾(6粒)を単粒水分計にかけて籾の水分を時間の経過とともに求めた。 籾の内部温度は遠赤外線の照射を始めるとすぐに上昇する。そして5層に重ねた籾層で遠赤外線を照射すると表面の一番上の層だけが乾燥する。表面から2層目,3層とそれ以下の層の籾はほとんど水分の減少が認められなかった。 2.循環式乾燥機を用いた遠赤外線による籾の乾燥実験前年度改造し遠赤外線ヒ-タを取り付けた循環式乾燥機によりコンバインで収穫された籾を乾燥し,前年度の乾燥能率(乾減率)と米の品質について再現性を確認するための実験を行った。実験中は籾水分を単粒水分計で1時間ごとに測定し,時間当りの籾水分の減少から乾減率を求めた。また,米の品質を表す胴割れについて乾燥前と後について調べ,その増加率から品質の判定をした。 本年度は1.1tonの籾を2回に分けて実験を行い,遠赤外線による籾の乾燥における乾減率は1回目に0.24%/h(平均)となり2回目は0.15%/hとなった。この値は通風乾燥の乾減率に高い値であって,遠赤外線を照射した効果が表れていない。これは本年度籾の量を多くし,乾燥機内を籾が循環する速度を遅くしたためではないかと考えられる。ただし,胴割れはほとんど起こらず品質については前年度と同様によい結果が得られた。今後の問題として乾燥能率の再現性について確認ができなかったので,さらに繰返し実験を行う必要があると考えられる。
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