多数の植物種が混在して生育している放牧地の植生の状況を実験的に再現し、緬羊の採食の状況を調査した。特に、緬羊が採食する際の植物種の識別の程度を明らかにすることを目的とした。そのために実験用ボ-ドを製作し、そこにはマイクロスイッチを5cm間隔で縦8列、横16行の合計128個配置した。それぞれのスイッチに牧草を接続し、採食された時のデ-タを自作のインタ-フェイスを介して、パ-ソナルコンピュ-タに記録させた。結果の概要は以下のとうりである。 1.オ-チャ-ドグラスとレッドクロ-バを同じ草丈で比較した実験では、レッドクロ-バの方を明らかに選択して最初に採食した。また、オ-チャ-ドグラスの葉身の先端と基部を比較した実験では、柔らかい葉身の先端をあきらかに選択して最初に採食した。 2.1回の採食行動で、緬羊がどの程度の草を口に入れているのかを検討すると、オ-チャ-ドグラスとレッドクロ-バの混在、あるいはオ-チャ-ドグラスの葉身の先端と基部を混在させると、2種を同時に口に入れて採食した割合は11-14%と低く、2種を緬羊は明確に識別して採食していた。 3.1回の採食行動での採食量の度数分布は対数正規型を示した。1回の採食行動で口に入れる牧草の数が多い程、多くの牧草を採食した。 4.嗜好性が異なるといわれているイネ科牧草4種を混在させた実験では、牧草の物理的強度には3倍近くの開きがあったにもかかわらず、4草種ともおなじように採食された。採食ボ-ドを用いた今回の実験方法では要因数を多くすると、選択採食していても、それを検出できない可能性が示唆された。
|