鶏胚の発生分化における卵黄嚢膜の生理的役割を明らかにする目的でここでの遺伝子発現の解析と細胞初代培養の確立を行った。また培養を確立した後、特異的に発現する遺伝子の探索やホルモン・薬剤処理が遺伝子発現にどの様な影響を与えるかを調べた。卵黄嚢膜は発生初期と後期では翻訳産物にかなりの相違があることが分かり、αーフェトプロテイン(AFP)とアルブミンとのスイッチは12日目に観察された。またアルドラ-ゼは8日目に筋型から肝型に転換した。一方、発生中の卵黄嚢に検出されるオボアルブミンはde novo合成ではなく卵白に由来することを確かめた。卵黄嚢膜のタンパク分解酵素活性が見かけ上非常に低いのはこのように卵白が卵黄嚢に移行するため、オボムコイドなどのプロテア-ゼインヒビタ-によるものであった。これらを除くとトリプシン様、キモトリプシン様の酵素活性が顕著に認められるようになり、その中のキモトリプシン型プロテア-ゼを精製し、酵素化学的性質を明らかにした。 卵黄嚢膜での遺伝子発現をいくつかのプロ-ブで見たところAFP、アルドラ-ゼ遺伝子以外にはCーmycやコラ-ゲン遺伝子の発現が見られた。また、抗体を使った実験によって上皮細胞成長因子やインシュリン様成長因子が認められた。このことにより卵黄嚢膜は細胞増殖機構や分化の問題を研究する上で適当であると思われる。 卵黄嚢膜より細胞培養を試み、それを確立することが出来た。5ー10%FCSを添加しなければならなかったが、卵白を少量加えるとFCS量は減少した。またインシュリンやデキサメサゾンを加えると増殖が促進された。現在、これらによって発現が促進される遺伝子の検索を行っている。
|