研究概要 |
平成元年度の研究計画に沿って、混合ル-メンプロトゾア(RP)および混合ル-メンバクテリア(RB)のジアミノピメリン酸脱炭酸酵素(DDC)-リジン合成酵素-活性を検討し、以下の結果が得られたので、報告する。ヘイキュ-ブと濃厚飼料(3:1)を給与している山羊のル-メン内容物からRPおよひRBを集め、超音波により細胞を破壊して、その遠心分離上清液を粗酵素液として用い、DDCの性質を両者間で比較した。DDC活性の測定には、他の微生物による研究に倣って、ピリドキサルリン酸(PLP,0.1mM)を添加し、また、基質としてジアミノピメリン酸(DAP)を3mMとなるように添加した。まず、遠心分離分画の酵素活性をみると、RPでは上清液のみならず沈澱画分にもかなりの活性がみられ、細胞内では、PRのDDCは膜または細胞内顆粒に結合しているものと考えられた。これに対して、RBでは上清中にほとんどの活性が現れた。また、DDCは、RPおよびRBともに酸素に弱く、還元剤の添加で復活する傾向があったので、DDC活性の測定には0.1%2-メルカプトエタノ-ルを常に添加することにした。次に、最適pHを検討した結果、RPでは6.3、RBではE.coliに近い6.8であった。最適温度は、RPで50℃付近、RBで45℃付近であった。いずれもル-メン内温度よりもかなり高い値であった。基質親和性の検討結果では、Km値は、RPで0.976mM、RBで1.119mMとなり、RPの方がやや親和性が高いと考えられた。次に、RPの膜結合酵素の可溶化を検討し、0.5%Triton X-100により可溶化されることが分かった。最後にRPについてのみ、ゲル濾過法(Sephadex G-100)によるDDCの分子量の推定を行なった結果、約170,000という値が得られた。これは、E.coliのそれに近い値であった。以上の結果から、RPのDDCの性質は、RBのそれとは全く異なることが分かり、これはRP固有の酵素と考えられた。
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