チ-ズなどの食品における固液相での蛋白質分解反応を明らかにするために、カゼインがpH4.5あるいはCa^<2+>の存在によって会合沈澱する性質を利用し、この系における蛋白質分解反応について研究した。 1.α_<SI->カゼイン(α_<SI->CN)溶液に10mHのCa^<2+>を添加し、α_<SI->CNを会合沈澱させた系(A系)とCa^<2+>無添加の溶液(B系)とにおけるα_<SI->CNのトリプシンによる分解について調べた。作用pHは7.1、作用時間は0〜24時間で行った。その結果、反応後のα_<SI->CNの分解を電気泳動(PAGE)で調べるとA系での分解はB系に比し遅く、特に初期1時間までの分解は非常に弱かった。分解生成物を比較すると、その数はA系はB系にくらべ少なく、また生成する分解産物にも違いが認められた。同反応を高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)で調べた結果、A系で生成するペプチドはB系に比し多かった。以上の結果からA系ではトリプシンによって細かく切断されていると推定された。2.βーCNが等電沈澱するpH4.5での分解をβーCNが溶液状態のpH6.0とPAGEを用い比較した(酵素はペプシン)。その結果、pH6.0ではβーI、II、IIIに相当する分解産物が生じたがpH4.5では生成しなかった。2M尿素存在下で反応させたところpH4.5での分解はpH6.0と同じであった。従って両者の違いはpH4.5ではβーCNが会合沈澱していることに起因すると推定した。次いでβーCNのpH4.5での分解と4℃(βーCNは沈澱しない)および30℃で試みた。その結果、4℃の分解はpH6.0の場合と同じで、30℃と異なっていた。更に同反応をHPLCでペプチドを分析した結果、4℃より30℃においてペプチドが多く生成し、これは1の結果と同じであった。すなわち、pH4.5やCa^<2+>によるカゼインの会合沈澱系は溶液系より多くの箇所が切断されていると考えられ、これはカゼインが会合沈澱を生成する蔡に生じる構造変化による結果と推定した。
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