研究概要 |
ウシの第四胃粘膜は、少なくとも3種の異なる蛋白質分解酵素原(ペプシノ-ゲン、プロキモシン、プロガストリクシン)分泌しているとされている。このうちペプシノ-ゲンとプロキモシンについては、主細胞と副細胞において同一細胞の同一顆粒に住み分けることなく共存することを著者らが明らかにした(Yamada et al.,Acta anat.,132:246-252;1988)。そこで著者らは、プロガストリクシンが子牛の固有胃腺粘膜でどの様な様式で存在するかを3種の抗血清を用いて光顕(PAP法)および電顕(Protein A-gold法)レベルで検索した。 光顕レベルでの観察では、いずれの酵素原についても腺頚部から腺底部にわたって上皮細胞の核上部に陽性反応が認められ、連続切片によってプロガストリクシンおよびペプシノ-ゲンとプロキモシンと同一細胞に共存していることが確認された。電顕レベルでの観察では、金粒子は主細胞、副細胞、胃小窩上皮細胞および表在上皮細胞の分泌顆粒上に明瞭かつ特異的に局在して認められた。サイズの異なる2種の金粒子を用いた2重染色の観察により、プロガストリクシンはペプシノ-ゲンおよびプロキモシンと同一細胞の同一顆粒に共存することが確認された。粘液産生細胞では、プロガストリクシンはペプシノ-ゲンやフロキモシンと同様に同一粘液顆粒内に粘液物質と共存しており、粘液顆粒中の高電子密度の芯にのみ3種き酵素原が共存していた。 以上の成績から、ウシのプロガストリクシンは固有胃腺粘膜の主細胞、副細胞、胃小窩上皮細胞および表面上皮細胞においてペプシノ-ゲンておよびプロキモシンと共に同一細胞の同一顆粒に住み分けることなく全体的に混在していることが初めて明らかにされた。
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