研究概要 |
鶏伝染性気管支炎(IB)ウイルスの血清学的性状は極めて複雑であり、そのことがIBの防遏対策上大きな問題点となっている。著者は本ウイルスが容易に抗原変異を起こし得るのではないかと考え、今回は特に若齢ヒナに持続感染させ、鶏体内で感染し続けているIBウイルスがどの様に変異するのか検討を加えた。更に実験に用いるヒナの日齢が違えば、ウイルスの動きも異なるのではないかと考え、2,4,6週齢のヒについて検討した。その結果、以下の成績を得た。 1.腎炎由来の鹿児島ー34株接種により、2週齢ヒナに最も強い臨床病状が発現した。下痢便の排泄も15週間続いた。他のヒナでは弱い呼吸器症状、一過性の下痢便が認められたにすぎない。 2.糞からは、すべての週齢のヒナに断続的ではあったが、16週間以上IBウイルスが回収された。しかし、ウイルスが回収されたことを確認する為に、試料を4〜6回発育鶏卵で継代する必要があった。 3.感染ヒナの血清中のウイルス中和抗体は、2週齢ヒナでは鹿児島ー34株に対してのみ、しかも低力価のものが認められたのみであったが、4,6週齢ヒナでは明らかな抗体上昇が認められた。これらの日齢のヒナでは、他のIBウイルス株に対する中和抗体の発現も認められた。 4.2週齢ヒナについては、再度同じ実験を行った。その結果、臨床症状、血清中の中和抗体の推移については、最初の実験結果と類似していた。 以上の結果、腎炎由来のIBウイルス鹿児島ー34株は、持続感染中ヒナの体内で明らかな抗原変異を起こさなかったと考えられた。幼若な2週齢ヒナは本ウイルス感染により、より重篤な臨床症状を発現したにもかかわらず、微弱な免疫反応のみを起こしたことは興味深い。
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