研究概要 |
平成元年度はホルモンと交感神経によるグリコ-ゲン分解に対する作用特性を比較検討した。得られた成果は1.5uM phenylephrine(作動薬)と20Hzで分交感神経刺激によつてそれぞれ最大の効果がえられた。両効果はともに遮断薬,phentolamineによつて完全に抑制されたが,交感神経刺激の最大効果はphenylephrineによるものの約70%しか得られなかつた。一方,シクロオキシゲナ-ゼ阻害剤,indomethacin存在下において,交感神経のグリコ-ゲン分解作用は抑制されたが,phenylephrineの効果は影響されなかた。肝実質細胞はエイコサノイドを産生しないので,得られた結果から,神経による肝糖代謝の調節には内皮細胞あるいはKupffer細胞で産生されるエイコサノイドが必須であると推定した。平成2年度はまず,ラット肝交感神経刺激は神経終末から放出されるnorepinephrineは作用を介してarachidonic acidあるいはeicosanoidsを産生して糖分解のみならず糖新生を促進することを明らかにした。さらに,潅流肝実験の結果をin vivoで確めるため,心臓カテ-テルを留置した非拘束ラットの視床下部腹内側核を電気刺激して,血糖及び,交感神経活性の指標として血中norepinephrineを径時的に測定した。得られた結果は視床下部腹内側核刺激による肝糖放出機構はin vitroの実験結果と一致した。したがつて,ラットにおける交感神経の糖代謝調節には,in vivoでも非実質細胞から産生れるeicosanoidsが重要な役割を演ずることが確認された。一方,動物を寒冷に暴露すると交感神経が活性化するので,寒冷暴露ラットにおける交感神経刺激により糖分解効果を検討した結果は,非実質細胞のアラキドン酸代謝が肝神経によって調節されることを示唆した。以上,本研究は交感神経による肝物質代謝調節に非実質細胞,特にKupffer細胞が重要な役割を演ずることを明らかにした。
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