研究概要 |
分泌果粒の形成と放出にはその内容のホルモンや酵素等の成分以外の物質が重要な役割を持つと考えられ,特に電解質が注目されている。われわれはいく種類かの分泌果粒が燐脂質の染色法により濃染し特にLuxol Fast Blue染色により陽性であることを観察した。一方,分泌果粒には高濃度の電解質元素を含むものがあることを、新鮮凍結乾燥超薄切片を用いた定量的X線微小部分析で発見し、報告して来た。多くの種類の動物と細胞の果粒について燐脂質と電解質濃度を検討したところ,粒液細胞果粒に高濃度のカルシウムまたはマグネシウムを含むものが多くみられたが、高濃度の硫黄が検出される果粒では,カルシウムやマグネシウムの濃度と強い相関を示したが(粗関係数=0.9),燐の濃度とは相関がみられなかった。さらに肥満細胞果粒には高濃度の硫黄が含まれるが,果粒にヒスタシンを持つラットではマグネシウムやカルシウムは少なく,果粒にヒスタミンの無い蛙ではマグネシウムが高濃度に含まれ,硫黄と強い相関を示した(相関係数=0.96)。高分子電解質である糖タンパク質とプロテオグリカンに二価陽イオンが働き、分泌果粒の内容をしぼませて保存し,放出のとき重要な機能をはたすと考えられる。果粒や細胞内小器官の元素組成を調べるには新鮮凍結乾燥超薄切片が必須であるが,切片作製には技術的な困難が有る。コロジオン膜を張ったグリツドに組織片切断面を軽く接触させてスタンプ標本を作製し,電子顕微鏡観察すると微細構造がよく観察され,定量的X線微小部分析により電解質元素が非常によく保存されることが明らかとなった。スタンプ標本を用いて分析すると、多数の果粒を分析することが出来,動物、細胞,果粒により元素細成は大きな巻を示したが、動物,細胞,果粒の種類により一定の傾向が見られた。新鮮凍結乾燥超薄切片の分析結果と比較して検討すると両現性のある,興味深い結果が得られるようになった。
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