研究概要 |
運動ニュ-ロンにはアセチルコリン(Ach)の他、種々のペプタイドが含まれるが、その働きについては不明である。また、運動ニュ-ロンにおいては、神経伝達物質や種々の神経栄養因子に対するリセプタ-も産生されている。運動ニュ-ロンの軸索を傷害し、その再生過程でこれらのペプタイドやリセプタ-の産生がどのように変化するかということをin situハイブリダイゼ-ション法により明らかにして、運動ニュ-ロンにおけるこれらの物質の産生調節機構の解明を試みた。ペプタイドとして、αおよびβーCG2P,Galanin(Gal),CCK,リセプタ-としてニコチニックAchリセプタ-,神経成長因子(NGF)リセプタ-をとり上げ、ラット顔面神経核の運動ニュ-ロンをモデルとして、顔面神経を切断した場合とピンセットで圧迫した場合について、時間経過を追って検討した。その結果、以下の二点が明らかになった。 1)同じファミリ-に属する二種のペプタイド,αーCGRPとβーCGRPの産生が、別々に制御されていること、また、同じニコチニックAchリセプタ-を構成するα_3サブユニットとβ_2サブユニットも別々に制御を受けていることがわかった。 2)軸索損傷により、αーCGRP,Gal,CCKのmRNAは著明な増加を示しβーCGRPmRNAは減少したが,これらの変化は,αーCGRPを除き,神経切断例の方が、圧迫例よりも著明であった。一方、NGFは種々のペプタイドの発現を調節する働きが知られているが、運動ニュ-ロンにおけるNGFリセプタ-mRNAの発現は、神経切断例より圧迫例において著明であった。このことより、少なくともβーCGRP,Gal,CCKの発現調節には、NGFは関与していないのではないか、と考えられる。
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