研究概要 |
発生過程の中枢神経系に存在し、発生を調節する機能物質として作用するプロテオグリカン分子を同定することを目的として、ラットの大脳組織からプロテオグリカンを分離した。生後1日ないし10ケ月齢の大脳組織からイオン交換および超遠心分離により可溶性プロテオリングを抽出した。プロテオグリカンはコア蛋白分子とこれに結合するグリコサミノグリカン分子から成る。大脳組織のプロテオグリカンにおける主要なグリコサミノグリカン成分は、コイドロイチン硫酸(コンドロイチン4硫酸)であった。コンドロイチン硫酸の殆んどは可溶性分画に存在していた。一方、ヘパラン硫酸は大脳のプロテオグリカンに少量しか認められず、不溶性であった。したがって大脳のプロテオグリカンは主にコンドロイチン硫酸鎖が結合する可溶性分子であると結論された。そこで、可溶性プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖をコンドロイチナ-ゼを用いて分解して、コア蛋白を分離した。SDSーPAGE法による分析の結果、可溶性のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白には、大きさの異なる6成分があることが判明した。すなわち、250,220,150,130,105,および93KDaの各成分である。幼若ラットの大脳組織には250と220KDaのコア蛋白が存在しており、その他の成分は微量であった。成熟ラットの大脳組織には150KDaのコアが大量に含まれており、250,130,105および93KDaのコアも存在していたが、220KDaのコアは検出されなかった。220KDaのコアは幼若組織においてのみ発現され、その他の4成分は、大脳形成に伴い増加し、250KDaのコアは常に同程度発現されていたことから、神経組織の発生に伴い異なるプロテオグリカン分子が発現されることが明らかにされた。各プロテオグリカン分子が神経系の発生過程において異なる機能を担っていることが示唆された。
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