研究概要 |
低酸素ガス吸入時に出現する呼吸抑制の中枢機序を麻酔ラットを用いて検討した。また、呼吸抑制と同時に出現する循環状態の変化や自律神経活動の変化などについても総合的に検討した。 1.呼吸抑制の本態 低酸素ガス吸入時には末梢化学受容器からの求心性呼吸刺激情報が増加しているにもかゝわらず呼吸抑制が認められる。これは呼吸抑制が中枢性に生じることを示している。呼吸抑制の主因は呼息時間の延長による呼吸数減少である。これは低酸素によって吸息活活動の開始が遅延することによって生じる。低酸素時には交感神経活動が減少し、心拍出量と動脈血圧の低下も認められた。この血圧低下は呼吸抑制の出現を促進すると判断された。また心拍出量の減少に依存した酸素消費量の減少も認められた。従って低酸素による呼吸抑制は代謝の抑制に対応した現象であることが判明した。呼吸抑制を生じる際の動脈血Po_2は約45mmHg,静脈血Po_2は約26mmHgである。 2.低酸素性呼吸抑制の軽減と防止 動脈血圧の維持は呼吸抑制の発生を抑制した。血中炭酸ガス分圧の上昇も呼吸抑制を軽減した。女性ホルモンであるプロゲステロンも呼吸抑制に拮抗した。慢性にシアン酸ナトリウムを投与し軽度の低酸素状態に持続しておくと,急性の強度低酸素による呼吸の中枢性抑制の発生が著しく軽減した。 以上により低酸素による呼吸抑制の本態および防止機序の全体像を明らかにし得た。
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