研究概要 |
1.中鎖アシルーCoAデヒドロゲナ-ゼのacetoacetylーCoAと複合体および基質であるoctanoylーCoAとの反応で生じるpurple complexの性質を共鳴ラマン分光法を用いて調べた。purple complexは還元型酵素と基質が反応して生じたoctenoylーCoAとの電荷移動複合体であることが判明した。両複合体とも、結合したリガンドの構造はC(2)=C(1)ー0^ーのかたちをした共鳴構造が大きな寄与をしたものになっている。これはC(1)=0の酸素原子付近に正電荷やdipoleなどの求電子基が存在し、カルボニル基と静電相互作用をする結果と考えられる。この静電相互作用は触媒反応においても重要で、基質のC(2)ーHのpKを下げるはたらきをし、反応初期におこるC(2)ーHからのプロトン引き抜きを容易にしているものと考えられる。 2.電子伝達フラビン蛋白(ETF)のアポ蛋白は二種の構造間の平衝で存在しており、その一方がFADと結合することが判明した。二種のapoETFをA^*,Aで表すと、A^* A,A+FAD holoETF,と表される。種々の陰イオンによって、A^* A,の変換が起こり、その効果はI^ー〜Br^ー>Cl^ー>F^ーの順に強かった。グリセロ-ルによっても同様の変換が起こった。分子ふるいクロマトグラフィ-において、AはhloETFと同じ保持時間で溶出され、A^*はこれより早く溶出された。遠紫外部CDスペクトルは、A^*がAやholoETFに比べβーsheetの含量が少ないことを示した。これらの結果から、A^*がAやholoETFに比べ緩い骨格構造をしていて、みかけ上大きな形をしていることが明かとなった。
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