研究概要 |
ニコチンによる急性毒性と加齢について検討した。6週齢と2年齢のラットにおけるニコチン(24.5mg/kg,ip)投与後15分以内の死亡率は各々、42.9、77.8%であった。ニコチン投与による振戦、間代性痙攣および強直性痙攣の発現時間は5mg/kg、24.5mg/kg投与群の間に差は認められなかったが、5mg/kg投与後の痙攣の持続は2年齢の方が長かった。2年齢のラットの肝のニコチン酸化酵素活性、ミクロゾ-ム中のPー450比含量並びにFMO比活性は6週齢の1/2以下に減少していた。ニコチン(24.5mg/kg,sc)投与により、線条体でDA,DOPAC,HVA,5ーHT含量の増加が認められた。血清コルチコステロン、モノアミンは生存例が死亡例より高い傾向を示した。6週齢のラットを用いて、ニコチンの脳室内(icv)投与による痙攣および致死効果は濃度依存的に増強され、その50%の痙攣量、50%の致死量は各々58.5ug/side、477.6ug/sideであった。メカミラミン前処置により、ニコチンによるすべての急性効果は拮抗され、icv投与によってもその拮抗作用は濃度依存的であった。Phenobarbital,Diazepam,MKー801あるいはSCHー23390前処置により、ニコチンによる痙攣および致死効果は抑制された。これらの結果は以下の事を示唆している。ニコチンの急性中毒は動態により強く影響を受け、これは薬物代謝活性の低下ならびに排泄の低下に基ずくものである。そしてニコチンの急性中毒死は中枢性の痙攣による呼吸抑制死であり、この痙攣は神経性アミノ酸により抑制される。ニコチン性アセチルコリン受容体についても検討している。ラット全脳からnAChRを高度に精製し、53kDalのバンドはβ2、80kDalのバンドはα4であることが明らかになった。α4サブユニットだけがリン酸化されており、タンパクリン酸化酵素Aによりリン酸化されたαサブユニットはセリン残基であった。α4サブユニットのリン酸化部位は複数箇所ある事を示唆している。
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