研究概要 |
近年、抗ジゴキシン抗体と免疫交叉反応を示す内因性ジギタリス様物質が、本態性高血圧症の患者の血中及び尿中で増加することから、本物質の本症成因としての役割が注目されている。内因性ジギタリス様物質はナトリウム利尿を促進しNa^+,K^+-ATPaseを阻害して血圧を上昇させると考えられている。そこで、片側の腎臓を摘出しdeoxycorticosterone acetateを投与し、1%食塩水を摂取させて高血圧にしたラットの尿中より、Na^+,K^+-ATPaseの阻害活性を指標として本物質を精製した。塩酸を添加して採取した尿を10分間煮沸後、YMー10限外濾過、CMーsephaーrose column chromatography,sephadex Gー10 column chroーmatography及び逆相HPLC法にて、Na^+,K^+-ATPaseを阻害する3種類の物質を精製した。これらの物質はラット脳より部分精製したNa^+,K^+-ATPaseを用量依存的に阻害した。これら3種類の物質のNa^+,K^+-ATPase阻害活性はトリプシン処理にては変化しなかったが、この3種類の物質の阻害活性は酸加水分解にて消失し、2種類の物質の阻害活性はプロリダ-ゼ処理にて失活した。また、これらの物質は抗ジゴキシン抗体と用量依存的に免疫交叉反応を示し、その反応の強度はNa^+,K^+-ATPaseの阻害活性と平行した。更に、1種類の物質を脳内に投与すると血圧が上昇した。これらの物質をアミノ酸分析すると、アミノ酸を同定することは出来たが、そのままシ-クエンサ-で解析しても、アミノ酸配列は決定されなかった。この事実から本物質のペプチド部分のNー末端がブロックされている可能性が考えられたので、このNー末端のブロックを外すべく努力したが、その過程で本物質の精製標品の量がアミノ酸配列の決定には十分でなかった可能性が生じた。そこで、現在精製法を改良し、その後、逆相HPLC法を繰り返してこれまでより大量の精製標品の精製に成功したので、現在そのアミノ酸組成及び配列について検討中である。
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