研究概要 |
イノシト-ル1,4,5ー三リン酸(IP_3)による細胞内Ca^<2+>放出機構解明を目指し,イノシト-ル環2位の水酸基に種々の置換基を付与した一連のIP_3アナログを合成した。IP_3認識蛋白に対するこれらのIP_3アナログの影響を以下の如く検討した。 1.赤血球ゴ-ストのIP_35ーホスファタ-ゼによるIP_3からIP_2への加水分解はIP_3アナログにより濃度依存性に抑制された。IP_3のKi値が14μMであるのに対しIP_3アナログは2〜6μMであり,IP_3よりむしろ高親和で認識されることを示唆する。 2.脳可溶性分画のIP_33ーキナ-ゼによるIP_4へのリン酸化もIP_3アナログは濃度依存性に抑制した。この際、IP_3より3〜30倍高濃度を要した。しかしCa^<2+>濃度を下げて同様のアッセイを行なうと,より低濃度のIP_3アナログで有効であった。 3.小脳や副腎皮質ミクロソ-ム分画の[ ^3H]IP_3結合もIP_3アナログはIP_3より数倍の濃度を必要とするものの濃度依存性に抑制した。また,IP_3アナログは小胞体からのCa^<2+>放出作用も保持していた。 これらの結果は,IP_3アナログはいずれのIP_3認識蛋白によっても良く認識されることを示す。したがってイノシト-ル環2位の置換基を介して他分子に結合せしめ,IP_3誘導体として用いることが可能である。一例として,置換基を介してセファロ-ズに結合させることによりIP_3親和性カラムを作製した。IP_3親和性カラムを用いることにより,上記三種のIP_3認識蛋白がいずれも適度の倍率で精製されることがわかった。さらには,これら既知のIP_3認識蛋白とは別種の蛋白が存在することも明らかになりつつある。
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