研究概要 |
近年高令化社会に伴い,骨粗鬆症の成因および治療に関する研究は、老人性痴呆のそれと並んで重要である。骨粗鬆症は異常な骨代謝が原因と考えられている。この骨代謝は種々のホルモン,増殖因子,プロスタグランジン等の微量物質で調節されている。私達はプロスタグランジンによる骨形成の調節を検討しており、最近,ヒト培養骨芽細胞の石灰化をプロスタグランジン(PG)D_2が著しく促進することを見つけた。本研究は二年間に互ってこの石灰化促進機構の解明を行い以下の成果が得られた。 1.培養液に加えられたPGD_2は、血清アルブミンによって代謝されており、活性型はPGD_2の代謝物である^<12>△ーPGJ_2であることが判明した。さらに種々の誘導体を検討したところシクロペンテノン環が必要であることおよび炭素15位のOHは必要ないことが判明した。 2.石灰化の促進はカルシウムイオンの細胞内への促進が考えられるが、確かに^<12>△ーPGJ_2は、カルシウムイオンの流入を促進した。 3.石灰化にはその基盤としてのコラ-ゲンが必要であるが^<12>△ーPGJ_210^<ー5>Mで20日間処理することによって2〜3倍に増加した。この時遺伝子の発現が増加していることがノ-ザンブロット法によるmRNAの解析で明らかになった。 4.非コラ-ゲン蛋白の細胞外マトリックスのうち骨に特異的なオヌテオカルシンは、^<12>△ーPGJ_2処理によって細胞から培養液に遊離してくる量は影響しないが、細胞層に沈着してくる量は活性型ビタミンD_3と同じ位増加していた。 5.これらの作用は、他のPGの場合と異なり細胞内cyclicAMP量の変動がないこと等から特異的受容体を介さないで直接細胞に入って作用するものと思われる。
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