研究概要 |
ホルモン産生に関する研究は、1.培養神経芽腫細胞(NBー1 cell)を用いて、Bt_2cAMPとphorbol esterの投与により、腫瘍細胞の分化を促し、vasoactive intestinal peptide(VIP),peptide histidine methionine(PHM),neuropeptide Y(NPY),metenkephalin,somatostatin,tyrosine hydroxylase(TH)等のホルモンの産生がみられることを、in situ hybridization(ISH),免疫組織化学、電顕を用いて明らかにした。2.WDHA症候群を呈する神経節芽腫はVIPのみならず、多ホルモン産生を同時に行なっていることをISH法を用いてmRNAレベルで明らかにした。3.褐色細胞腫、パラガングリオ-マ、および褐色細胞腫と神経芽腫群腫瘍混合腫瘍において、中間フィラメントの発現やカテコ-ルアミン合成酵素の局在と分布を調べ、非機能性褐色細胞腫の中にはTHを欠損するものがあることを明らかにした。4.下垂体腺腫におけるchromogranin,synaptophysinの発現は共に100%であることを明らかにした。5.神経内分泌腫瘍におけるaromatic Lーamino acid decarboxylaseの発現頻度を調べた。 増殖機能に関する研究は、1.reg遺伝子はヒト内分泌腫瘍には発現していないが、膵小葉由来の腫瘍のマ-カ-になることをISH法を加味して証明した。2.高度悪性の神経内分泌細胞癌と低悪性度腫瘍であるカルチノイドを比較すると、前者では増殖細胞核抗原(PCNA)が腫瘍細胞の90%以上に発現し、間質のHLAーDRα陽性細胞は非常に少ないのに対し、後者はPCNA陽性腫瘍細胞は30%と少なく、HLAーDRα陽性間質細胞は多数認められた。Pー53はいずれの腫瘍でも陰性だった。すなわちPCNAとHLAーDR抗原はこれらの腫瘍の増殖と進展に関与する重要な因子と考えられた。
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