研究概要 |
コレラ菌など病原ビブリオ(Vibrio cholerae 01,非01,腸炎ビブリオ,プレシオモナス,エロモナス)を用い,リゾチ-ム溶菌法により制限酵素産生菌のスクリ-ニングを行った。本法は病原菌から安全かつ迅速に制限酵素産生菌をスクリ-ニングする簡便な方法である。病原ビブリオは本法によりよく溶菌した。 上記の病原ビブリオの中から約10パ-セントの割合で制限酵素産生菌が見い出された。このうち10株以上の制限酵素が精製され,その特異性が決定されたが,V.cholerae 01又は非01由来のものはすべてよく知られた制限酵素のアイソシゾマ-であった。しかしプレシオモナス(P.shigelloides 319ー73)から分離されたPshAIと,腸炎ビブリオ(V.parahaemo lyticus 4387ー61)から分離されたVpaK32Iは新型制限酵素であり,遺伝子操作に有用であろう。特にVpaK32IはNEB中央研究所で独立で発見されたSapI制限酵素と共に,5'ーGCTCTTC(1/4)というゆるみのない7塩基対認識制限酵素であり,これは世界で最初の発見である。現在本菌から耐熱性ヘモリシン陰性(=非病原性)変異株を分離する実験を遂行中である。PshAI及びVpaK32I生産菌はともに成育が早く,かつ酵素も安定であり,収率も高かった。 なお,特異性の決定された腸炎ビブリオの制限酵素はすぼて非二回回転対象の塩基配列を認識・切断した。数度の試みにもかかわらず,ビブリオの制限酵素遺伝子の大腸菌への導入は成功に至っていない。また,サルモネラやエルシニアの特別の血清型には,一定の制限酵素が高率に見い出されることがあるが,病原ビブリオの場合はこうした傾向は現在の所見い出されていない。
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