研究概要 |
C型インフルエンザウイルスのレセプタ-認識能(HA)と破壊能(RDE)の発現部位をHE糖蛋白質上に位置付けることを目的に研究を行い,以下の成績を得た。 1.RDEに及ぼす抗HE単クロ-ン抗体の影響を調べたところ,RDEの基質として鶏赤血球膜上のレセプタ-及びラット血清インヒビタ-を用いた場合には,赤血球凝集阻止能(HI)を持つ抗体(J14,J9,Q5)はRDEを強く阻害したが,HI能を持たない抗体(K16,S16)は全く阻害しなかった。最も強くRDEを阻害したのはJ14であった事から,RDE発現部位は,J14によって認識されるエピト-プ近傍に存在するものと考えられた。 2.低分子基質(9ーOAcーNANAやpーNO_2ーphenylacetate)を用いた場合には,単クロ-ン抗体のみならず,球々の動物免疫血清によってもRDEは全く阻害されなかったことから,RDEの解媒部位に対する抗体は出来にくいものと判断された。 3.^3HーDFPで標識したHEをSDSーPAGEで分析したところ,活性セリン(アイソト-プ標識セリン)は,HE1サブユニット中に存在する事が判明した。更に現在,CNBr分解で得られたペプチド断片の中から放射活性を持つ分子量約6Kのペプチドを単離精製し,アミノ酸配列を決定する作業を進めている。 4.HAとRDEの両方に異常を有する16種の抗HE単クロ-ン抗体低抗性変異株のHE遺伝子の構造解析から次の事が明らかとなった。(1)N端から245,266,283番目のアミノ酸に各々変異が生じると,レセプタ-との親和性が増加し,中でも283番目の変異が最もその度合が強くなる事。(2)186,187,190,206,212,217,226番目のアミノ酸に変化が生じるとレセプタ-との親和性が低下し,中でも186番目と187番目の変異が最もその度合が強くなることが明らかとなった。
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