研究概要 |
ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)は,突発性発疹の病原体である。CD_4陽性Tリンパ球を標的とすること,またわが国では全員が生後6ケ月から2歳までに抗体が陽転する。これらのことから,HHV6が,原発性のリンパ節疾患に関与していることが疑われる。従来から原因不明とされているリンパ節疾患に,亜急性壊死性リンパ節炎がある。歴史的には,1972年にわが国の2つのグル-プにより別々に記載されたものである。病理学的に亜急性または組織球性壊死性リンパ節炎と診断された頸部リンパ節の生検材料19例を対象とした。この疾患は日本人の思春期の女性に多い。年令は14〜31歳,リンパ節腫脹歴4〜12週である。大部分は発熱があり,局部は有痛性であった。病理組織学的には瀘胞構造は破壊され,壊死に陥り,細胞破壊物が大量にみられ,部分的に組織球におきかえられ,細胞のdebrisを貧喰している像がみられた。核崩壊,核萎縮も広調にみられた。HHV6抗原はそれらの壊死周辺部のリンパ球および組織球に著明に検出された(19例中7例)。病変がほぼ同一のステ-ジにあるものでは,皮質および傍皮質領域にいずれも抗原が検出されたが,再生期の新たな瀘胞構造のみられるものでは抗原はほとんど検出できなかった。典型的な病理像は,増殖性の単核球細胞,およびfoamy細胞の増生を傍皮質域に伴なう凝固壊死である。以上から,病理学者により従来“亜急性壊死性リンパ節炎"と診断されている全ての症例と,ウイルス抗原の存在とは必ずしも一致しないが,このウイルスがこの診断の枠内の病理組織所見に何らかの役割をはたしていることが示唆される。
|