研究概要 |
当研究は筋ジストロフィ-症の栄養状態を検討することから始まった。ビタミンB_1(VB_1)の血液中の存在はチアミン(T)のリン酸エステル体:一リン酸(TMP)、二リン酸(TDP)、三リン酸(TTP)及び遊離のT、の4つの化学型である。これらを、高速液体クロマトグラフィ-(ポストカラム螢光法)により分離定量を試みた。その結果、全チアミン量では当疾患者と健常者間に差はなかったが、その存在割合に違いを認めた。他方、健常者の血液において、採血後測定までの血液の保存状態によりその分離定量値に変動が生じることが明らかになった。これらの2点により、TDPをリン酸化してTTPを生成する酵素:TDP Kinaseの存在が推定された。このKinaseの存在を実証するために基質と推定されるproteinーbound TDPをmarkerとして、TDP Kinaseの分離精製を目指した。液体等電点電気泳動装置(Rotofor)、TDPーligand affinity columnにより分離したproteinを用いて、TDP Kinase活性発現状態の再構成を試みたが不成功であった。又、分離したproteinのTDPとの結合能力を平衡透析装置を用いて検討したが失敗した(平成元年度)。従って、TDP Kinaseの性質を知るために血液を種々の条件下に置き、TDP→TTPの変換率を活性の目安として、TDP Kinaseの諸特性を検討した。その結果、TDP Kinaseは赤血球中に存在するSH酵素で、金属及び血漿中に存在する成分をcofactorとすること等が明らかとなった(平成2年度)。試料血液に酸化防止のためdithiothreitolの添加、新らたに硫安塩析及びDEAEイオン交換樹脂columnの段階を加えて、分離操作の改良を試みた。その結果、最終段階で三種のprotein(210KD,180KD,125KD)に集束した来た。この三種を分離するために再度のaffinity column,Rotofor,Dyeーligand affinity columnへのapplyを検討している。他方、TDP Kinaseと当症(DMD)との関わりを調べたところ、DMD病態時はその活性が高く、その結果TTP量が高値であると結論される(平成3年度)。このことが当症の原因であるか結果であるのか、さらに検討が必要である。
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