研究概要 |
医療従事者における単純ヘルペスウイルス(HSV)感染に関するリスクを明らかにすることを目的として血清疫学的方法を用いて研究を行い、以下の結果を得た。 1.医療従事者の年齢層別HSV抗体陽性率を一般人のそれと比べると、20歳代,特にその前半において前者の陽性率は後者のそれよりも高かった。また,抗体価の分布は両者で差が見られなかったが,20〜24歳においては前者の力者の力価は高い方にややかたよっていた。 2.職種として医師と看護婦を比較すると,看護婦群は医師に比べて陽性率が高く,医師の陽性率は一般人と比べても有意に低かった。 3.2つの病院における看護婦群の抗体陽性率を見ると,20歳代において両者とも一般人よりは高かったが,病院間に差が認められた。 4.看護婦群の勤務部署と抗体陽性率の関係を調べると,病棟勤務群に比べて外来勤務群が,また,内科系よりも外科系に勤務する群が,いずれも20歳代において高い抗体陽性率を示した。 5.看護婦群のうち,複数回の抗体測定を行えた者を追跡して抗体陽転率と抗体価の有意上昇率を調べると,前者は全体で1.00%/人ー年であったが,陽転者のほとんどは20歳代の群に属していた。一方,後者は2.25%/人ー年と陽転率よりも高く,上昇を示した者も多くの年齢層にまたがっていた。 6.免疫ブロブリンクラス別の抗体定量はIgGについてはその方法を確立されたが,IgG,IgAについては非特異反応を十分抑えた反応系を得るためにまだ改良が必要な段階である。 これらの結果は医療従事者,その中でも20歳代前半を中心とした看護婦群がHSV感染に関するリスクグル-プである可能性を示しており,また,勤務部署などが感染機会に影響を及ぼしていると考えられる。
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