研究概要 |
(1)従来、DBA/2細胞をBDF_1に移入して誘導するGVHにおける抗体産生細胞の活性化は自己抗体産制B細胞に限られ選択的であるとされていたが、自己抗原および外来抗原に特異的な抗体産生細胞数を経時的にELISPOT法で検討した。その結果、いずれの抗原に対する抗体産生細胞も同頻度で活性化されていることが明かとなりGVHにおける抗体産生細胞性化は非選択的な多クロ-ン性活性化に基くことが示された。 (2)GVHで生じる腎病変の形成過程を蛍光抗体法におよび電顕的にて観察した。その結果、電子高密度物質の沈着が糸球体基底膜上皮下およびメサンギウムにみられ、また、メサンギウムにはMESANGIOLYSISがみられる。IgGは毛細管系蹄にIgMはメサンギウムを中心に沈着することが示された。急速凍結・ディ-プエッチング法による検索を行った。その結果、レプリカ膜に観察では、メサンギウム領域と上皮下に様々な大きさの沈着物を認めた。沈着物の周囲の細かい細腺維配列は乱れており、緻密層の一部は、破壊され不規則に拡大していた。足細胞の足突起内のマイクロフィラメントは増加し、内皮細胞は所々で糸球体基底膜より剥離していた。以上より、この実験系では、免疫複合体沈着物がメサンギウム領域や糸球体系蹄壁の網目状構造を破壊し、糸球体の荒廃に強く関与していることが示唆された。 (3)様々な組み合わせ(BDF_1←DBA/2,BDF_1←B10.D2,CAF_1←BALB/c,CAF_1←A/J)でGVHを作成し各種血清抗体価と各実験群間の腎病変の程度を比較検討した。また、BDF1←DBA/2において各個体間での血清抗体価と腎病変の程度を検討した。IgGクラス自己抗体産生および病的蛋白尿はDBA/2→BDF_1、BALB/c→CAF_1でみられ、蛋白尿の頻度はそれぞれ100%、33%であった。蛋白尿のみられたマウスでは糸球体に著明な免疫複合体の沈着に加え、メザンギウム融解や半月体形成の所見がみられた。IgG抗体とGVHR腎炎の相関が示唆された。 (4)BDF_1←DBA/2で誘導したGVHでmyc,raf,myb遺伝子の発現を検討したところ、B細胞の活性化に一致してmyc,raf遺伝子の発現が増強していた。これら遺伝子の発現と細胞回転との相関を検討したところG2+M期細胞の消長とよく一致し、B細胞の増殖へのこれら遺伝子の関与がin vivoで示唆された。 (5)BDF_1→DBA/2 GVHにおける肺を病理組織学的に検討したところ肺胞壁間質に細胞浸潤がみられ軽度の間質性病変が認められた。BALF(Bronchioーalveolar lavage fluid)の検討では炎症の指標となるACE(angiotensin converting enzyme)活性の上昇がみられると同時にリンパ球の比率が増加することがあきらかになった。従って、このGVHによる肺病変は間質性肺炎のモデルとなりうることが示唆された。
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