研究概要 |
強皮症一多発性筋炎(PSSーPM)重複症候群に特異的に見いだされる抗Ku抗体の対応抗原であるDNA末端結合蛋白(70kD/80kD蛋白ヘテロ二量体)をコ-ドするcDNAの分離に成功した.そこで,このcDNAを利用し,1)ku抗原エピト-プの解析とエピト-プ反応性,2)膠原病患者におけるKu遺伝子構造の検討,3)大腸菌発現産物を用いた高感度抗体検出法の開発,を行い,臨床的に役立てることを目的とした. 1)80kDーKu蛋白をコ-ドする全長cDNA(Ku80ー6)および70kDーku蛋白の部分cDNA(K68)の制限酵素断片より作製したエピト-プライブラリ-から,抗Ku抗体陽性患者血清でエピト-プcDNA断片をクロ-ニングし,そのアミノ酸配列を決定した.その結果,70kDーKu蛋白のC末端に1カ所,80kDーKu蛋白のC末端近傍に2カ所のエピト-プが確認された.患者血清はこれら3カ所のエピト-プに対して多彩な反応性を示し,エピト-プ反応性と臨床的特徴の間に相関が認められた. 2)膠原病患者および健常人の末梢血白血球から抽出したDNAを制限酵素処理後,アガロ-ス電気泳動で分画し,サザンブロット法でKu抗原遺伝子の多型性を検討した.Hind III処理DNAをKu80ー6cDNAでハイブリダイズした時に,2.8kb断片の多型性を認めた.この多型断片はイントロン内にコ-ドされると考えられた。2.8kbーHind III多型断片は,抗U1RNP抗体陽性SLE患者全員に見いだされ(11/11),同抗体陰性SLE(4/9)および健常人(7/16)に比して有意に高頻度であった. 3)70kDおよび80kDーKu蛋白をコ-ドする部分cDNA(K14およびK71)が発現するβーgalactosidaseとの融合蛋白を精製固相化して,抗Ku抗体検出のためのELISAを開発した.ELISAでの抗Ku抗体はOverlap症候群で高い陽性率を示し,特にPSSーPM重複例に陽性率が高かった.これに対し,他の疾患では陽性率・抗体価ともに低く,従来の成績を裏付けた.
|