研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)における肝内胆管の破壊には胆管上皮細胞に対する自己反応性Tリンパ球反応が関与している事を明らかにした。すなわちPBCの障害胆管上皮内にはCD8陽性Tリンパ球浸潤が認められ,胆管上皮周辺にはCD4陽性Tリンパ球の浸潤が多数認められる。PBC患者の脾細胞は剖検時に得た自己胆管上皮細胞に対して細胞障害活性を示す。脾細胞のうち,CD8陽性Tリンパ球が細胞障害性を発揮し,非Tリンパ球には細胞障害活性はない。PBCの自己抗原を同定する為に,ヒト胆汁蛋白中よりヒト胆管上皮細胞に由来する蛋白抗原BIを家免抗ヒト胆管上皮抗体を用いて,SDSーPAGE,Western blottingで検出,精製した。PBC患者の末梢血リンパ球はBI抗原に対して症患特異的にproliferationを示し,増殖反応はTリンパ球分画に認められた。我々はPBCにおける自己抗原の一つとしてBIが重要と考えている。BIはm.w>zooK.D.であり,シアル酸染色陽性で,脂肪染色は陰性である。既知の分子との抗原交又性をWestern blottingで検討すると1gA,Laminin,IV型コラ-ゲン,PDHーE2,CEA familyであるbiliary glycoproteinとは異なる。 胆汁蛋白の分画は逆相HPLC,イオンカラムクロマトグラフィ-等にても,成功しなかったが,SDSーPAGE,Western blottingで胆管上皮抗原の精製が可能である事を明らかにした。今后のPBCの自己抗原の精製,同定,更にはTcell epitopeの決定へて足がかりを得たものと考えている。
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