我々は劇症肝炎患者血中にヒト肝細胞増殖因子(hHGF)を見いだし、本因子を精製した。hHGFはヒトにおける生理的な肝再生因子である可能性が高いことから、肝再生におけるhHGFのin vivoでの効果を明らかにすることを目的とした。予備実験として既知の細胞増殖因子であるEGFの効果を正常および部分肝切除ラットを用いて経静脈的あるいはAlzetのミニポンプにより持続的に腹腔内に投与して、肝再生に及ぼす影響を検討した。EGFの投与量を50Mg/ラットまで増加させたが、肝DNA合成の促進効果はみられなかった。部分肝切除ラット(40%切除)に術後4時間目に精製hHGF約0.56Mg/100g体重腹腔内投与し、その20時間後に肝DNA合成を〔^3H〕チミジンのとりこみで測定した。対照ラット(生理食塩水投与)の肝DNA合成活性は117.4±24.7dpm/MgDNAであるのに対して、hHGF投与ラットでは222.4±33.3dpm/MgDNAと約2倍に増加した(p<〇.05)。胃や脾におけるDNA合成活性には有意の変動はみられなかった。しかしこのhHGFのin vivoでの肝再生促進効果は正常および四塩化炭素肝障害ラットを用いた実験ではその傾向はみられるものの、統計学的には確認できなかった。我々は関西医大喜多村教授と共同して、最近hHGFのcDNAのクロ-ニングに成功し、現在recommbinant hHGFを得つつある。したがって、今後にhHGFを得ることにより、このhHGFのin vivoにおける肝再生促進効果をさらに明確にしたいと考えている。
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