研究概要 |
真菌の主要な菌体成分であるbeta1,3グルカン(βG)の呼吸器に対する病原性につき,昨年度に引き続き研究を行なった。 1.Sick building症候群(SBS)の発現因子としてのβGの役割りについては,昨年のVasteras市に引き続き,Stockhelm市,Gothenburg市等に対象を拡げfield studyを継続した。コントロ-ル群に比し,SBS群のair sample中のβG量は多く,かつ呼吸器症状の発現率とβG量はdose dependentに対応する成績が得られ,SBSとβGの相関性がさらに裏付けられた。 2.βGのこうした呼吸器に対する病原性を,次にモルモット実験吸入系を用いたin vitro実験から解析した。昨年度の報告のように,河溶化されたβG吸入時には,気管支肺胞洗浄液(BALF)中には,好中球および肺胞マクロファ-ジ(AM)分画の選択的な増加が認められた。これに対し,非可溶化(粒子状)βG吸入時には,BALF中の細胞分画には有意の増減はなく,一方肺間質領域においては,(1)5ないし7日間にもおよぶ好中球,AM分画の減少が発現し,(2)これは,3ないし5週間のβG反復吸入後には,逆に増加を示すに至るという極めて興味深いdynamicsを呈することが判明した。この成績は,βGは呼吸器に対し急性の病原性を示すのみでなく,慢性の反応の発現にも関与しうることを示唆するものを考えられた。 3.上記のような反応は,AM表面のリセプタ-へのβGの結合により惹起されることを昨年報告したが,このβGリセプタ-はscavenger receptorではなく,βG特異的であることをラテックス粒子を用いたβGリセプタ-のin vitro競合反応により証明した。
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