研究概要 |
1.免疫系とオリゴデンドロサイト:髄鞘塩基性蛋白に対するT細胞(MBTーT)に対し,アストロサイト,ミクログリアともに,Ia抗原が誘導され得るにもかかわらず,抗原呈示をしなかった.MBPーTのうちオリゴデンドロサイトを傷害するクロ-ンはえられなかった.種々のサイトカインはオリゴデンドロサイトに対し傷害性には働かず,crude lymphokineはむしろオリゴデンドロサイトの分化を促進した.現在オリゴデンドロサイトのprecursorのcell lineを作成し詳細を検討中である. 2.中枢神経系のサイトカインネットワ-ク:ミクログリアILー1,6,TNFαを産生し,アストロサイトはそのほかにMーCSF,GMーCSF,TGFβを産生するが,従来言われていたILー3は産生しなかった.このうち,CSFはミクログリアの増殖・活性化に,TNPはアストロサイトの活性化に働くことが明らかになった.更に,ミクログリアは上記サイトカインとは異なるアストロサイト増殖因子を産生しグリオ-ジスの機序に関与し,アストロサイトはミクログリアを不活化する因子と血管内皮細胞のtight junction形成を促進する因子を産生することが判明した.また,ILー3,6,GMーCSFは神経細胞の分化,生存を促進することも知られており,中枢神経系でグリア細胞由来のサイトカインが複雑なネットワ-クを形成していることが示唆された. 3.ウイルスによるグリア細胞の変化:ヒトレトロウイルスHTLVー1のtax遺伝子を導入,誘導することによりグリア細胞に主要組織適合性抗原を誘導でき,同時にサイトカイン産生も誘導される.同様の現象はマウスレトロウイルスLPBMー5によるアストロサイトの感染でも起こるが,いずれの場合も,ILー6の産生が主体で,TNFαの産生は起こらなかった.これはウイルスによるグリア細胞のサイトカイン産生の機序はLPSやTPA等の非特異的刺激によるものとは異なることを示している.
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