研究概要 |
私どもの開発しつつある非観血的単位心筋病変測定法は心臓の固有振動数,内径と壁厚より単位心筋弾性率を求める方法である。昨年度は,本法の理論的妥当性の確認のため,既知の弾性率の心蔵モデルを作成し本法による値と切りだし切片で求めた弾性率と比較した。これらは良い相関を示し,本法による心筋弾性率の測定が妥当であることを示した。その上で本年度は以下の検討を行なった。 1)前年度中に非侵襲的に体外より心臓に振動を加える臨床用装置を試作したが,本年度はこの装置を心臓カテ-テル検査中の各種心疾患者に用い,観血的に得られる単位心筋弾性値との比較を行なった。 2)拡張末期の心臓の固有振動数は,食道内微小振動センサ-で検出した伝達振動を本学工学部と共同で開発した時変自己回帰スペクトル推定法により解析することにより求め得るが(前年度報告),本年度はこれらの方法を用いて肥大型心筋症患者の拡張末期における心筋弾性率を測定し正常心筋弾性率と比較検討した。その結果,正常の心筋弾性率に比較して,肥大型心筋症患者の心筋弾性率はより高値を示し,肥大型心筋症の左室コンプライアンスの低下が従来強調されてきた形態的な壁厚の増加だけではなく,単位心筋弾性率の増加によるものであることを明らかにした。この結果は現在論文投稿中である。又,数名の患者において単位心筋ヤング率の経時的変化の測定を行ない目下解析中である。 3)心臓の固有振動数をより非侵襲的に,かつ,外来などで簡単に測定しうるように胸壁からの超音波ドップラ-法をもちいる方法を,本学工学部と共同で開発中である。現在モデル実験を完了し,本年度日本音響学会,日本超音波医学会で報告する。
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