研究概要 |
ブタ大動脈から採取した内皮細胞を継代培養して行ない,以下の結果を得た。 1.流れによるせん断応力の負荷によって細胞形状及び骨格構造(マイクロフィラメント:MF)が変化することを明らかにした。細胞骨格が形状する以前に既に流れに反応を示しており,その過程の詳細を蛍光測光顕微鏡を用いて解析した。 2.培養内皮細胞の力学的性質にはたす細胞骨格の役割をマイクロピペット法を使った粘弾性試験によって検討した。その結果,MFの粘性及び弾性特性が細胞全体の力学的性質に強く影響を及ぼしていることが明らかになった。せん断応力をうけた培養内皮細胞の粘弾性特性の実験についても同様に検討した。 3.細胞培養の基質として細胞外マトリックスであるへパラン硫酸,コンドロイチン硫酸,コラ-ゲン線維を混在させて,内皮細胞を培養すると著しく細長い形態をもつようになることが明らかとなった。しかしながら,これら個々の成分ではこのような効果は得られず,成分を混合した条件でのみ見られた。これらの細胞にせん断応力を加わえても,形態変化の時間経過はガラス上で培養した場合よりも遅かった。 4.せん断応力を負荷しながら培養内皮細胞と血小板多血漿を接触させ,かつ血漿中に蛍光色素を入れて励起光を照射すると,照射領域にのみ血小板が粘着・凝集してくる現象が新たに見つかった。これは,培養内皮細胞を用いた血小板血栓モデルとして利用可能であると考えられた。 5.せん断応力負荷下における培養内皮細胞の物質透過性の検討については、細胞に均一なせん断応力を負荷する方法と,培養液の漏れをなくして透過性のみを計測するための方法に改良が必要であることがわかった。今後この改良を続けていく予定である。静置培養下での透過性については基本的な測定を終えた。
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