研究概要 |
本研究では再潅流時における徴小循環障害の病態因子を明らかにする目的で、1)徴小血管内皮細胞と好中球の混合培養系,2)心筋細胞,内皮細胞,好中球の三者混合培養系を作製し,低酸素ー再酸素化モデルを用い,アラキドン酸リポキシゲナ-ゼ(LP)代謝並びにラジカル産生が好中球粘着や内皮・心筋細胞障害及ぼす効果について検討した.1)正常内皮細胞に比較し,再酸素化した内皮細胞と好中球と混合培養した際の好中球の内皮細胞に対する粘着能は亢進した.かかる再酸素化内皮細胞においてESR法で測定したラジカル産生は再酸素化1及び4時間後をピ-クとする2峰性の産生亢進がみられ,前者はキサンチンオキシダ-ゼ阻害剤allopurinol,後者はLP阻害剤nordihydroguaiaretic acid(NDGA)により著明に抑制された.NDGAにより抑制される内皮細胞のLP代謝産物量と好中球粘着・ラジカル産生には密接な相関が認められたが,シクロオキシゲナ-ゼ阻害剤indomethacinは逆に好中球粘着並びにラジカル産生を亢進させた.2)コラ-ゲン膜で仕切られた培養皿の上段に内皮細胞,下段に心筋細胞を培養し再酸素化を行った後白血球を上段に加え,心筋,内皮細胞障害並びに,ラジカル産生,白血球粘着,浸潤能を測定した.白血球の粘着,浸潤能は再酸素化直後から亢進し、1時間後にピ-クを示して低下した.ラジカル産生は上段(内皮近傍)は再酸素化早期に多く,下段(心筋近傍)は再酸素化後期に多く認められた.心筋細胞障害の程度はラジカル産生量と密に相関した.再酸素化後のラジカル産生と心筋細胞障害は内皮細胞,白血球存在下に著明に増強し,再酸素化後,内皮細胞の障害に伴って,白血球のラジカル産生・遊走能が亢進することが明かになった.以上より再酸素化による内皮細胞損傷が白血球の活性化を起こし,ラジカル産生亢進と心筋細胞障害を亢進させている可能性が示唆された.
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